2019年末に始まった新型コロナウイルス感染症が4年目になってしまいました。
しかし、人間の意志の力というのは本当にたいしたものだと思います。それは、昨年今年と徐々に出品者が戻ってきたことでした。
1.取組の体勢
今回は実行委員長を瀬田さんが引き受けて下さり、彼女の友人たちも実行委員会に初参加され、その他のメンバーを含めて初めての実行委員が4人もいる刺激的な準備体制となりました。いつも10人以上の参加、斬新な意見も出て、その中から今回展の企画展示「ウクライナに平和を!」も実現できました。昨年までは感染状況も踏まえて、埼玉平美の役員だけで準備を進めてきましたが、呼びかけが大切であるということを再認識させられることとなりました。
2.出品状況
出品者と点数 117名 331点(昨年108名 310点)
初出品者 17名(昨年11名)
困難な条件の中ではありましたが、昨年よりも多い出品者を迎えることが出来ました。実行委員の呼びかけもありますが、ウクライナでの戦争のニュースが毎日のように流される中で、何かしなくてはとの思いで出品された方もおられたのではないでしょうか。
3.入場者
1047名
依然としてコロナ禍前の半分ほどの入場者となりました。しかしながら、中学生が友人同士で来館し、学校の課題で来たとのことでした。コロナ禍ではあるものの、少しずつ社会全体が元に戻るべく頑張っていることを感じました。
4.会場の雰囲気とお客さんの反応
多様な表現方法は埼玉平和美術展の誇れる部分ですが、今年も発揮されました。
入場者のアンケートからは「作品の熱と息づかいを作品ひとつひとつに感じました。声高でなく静かにたおやかにその心が伝わってきます。」という感想が寄せられました。〝平和の壁に花一輪〟という私たちが掲げているものが鑑賞者の方たちにも受け止めてもらえて、実行委員や出品者の方たちの励ましになるものです。
ここ数年、近くのお年寄りの施設の方たちが介護職員の方たちと観に来てくださいました。
他方で、「平和展と名乗っているのですが年々主張が大人しくなっているような印象です。過激であれば良いというものではないですが・・・平和を強くメッセージするような(以前にはありました。)作品を期待したいです。」という叱咤激励(しったげきれい)ともとれる感想もありました。毎年見に来て下さっている方からの励ましに、作品を作る際に安易な気持ちではつくれないなと受け止めました。
5.今回展の企画行事
●「ウクライナに平和を!」企画展示
ウクライナでの戦争は実行委員会でも話題になり、埼玉平和美術展ならではの展示をとの思いで、出品者に訴えたところ、沢山の方がこのコーナーへの出品に応じて下さいました。ジャンルも平面だけでなく立体やインスタレーションと充実した展示になりました。
●特別展示と作家研究会
個人名は本人のネット掲載許可が出てから載せます。
????(水彩34点)
????
(切り絵・絵・立体33点)
お二人の心温まる作品が観る人に安らぎを与えてくれて展覧会を盛り上げてくれました。
??さんは知り合いや友人の方にご自分では最後の個展になるかもとの気持ちで案内したとのこと、お二人とも教鞭をとられていた経歴もあり、たくさんの教え子や友人が来られていました。
研究会は人数制限がある中、公表しない形での小さな取り組みとなりましたが、沢山の方が参加。お二人の制作上の技術を含めたわかりやすい話と作品に、参加者一同納得させられました。
●メッセージコーナーは感染拡大を防ぐために今年も実施しませんでした。鑑賞者(特に子ども達)が〝平和へのメッセージ〟を託すことの出来る貴重な場は埼玉平和美術展ならではの取組ではありますが、再開できる日を楽しみに待ちましょう。
●合評会を3年ぶりに実施
感染防止のための人数制限があるので、搬入時に申し込むという形にしました。当日多少増えたものの心配するほどのこともなく久し振りに実施できてよかったです。申込用紙が徹底できなかったのが反省点です。
6.マスコミ
今年は埼玉新聞社としんぶん赤旗の取材がありました。「ウクライナに平和を!」の企画展示をもっと前面に打ち出して、マスコミへの呼びかけをすればよかったと、事務局として反省です。
7.新入会員
3名 敬称略
個人名は本人のネット掲載許可が出てから載せます。
????(絵画・越谷市初出品)
????
(絵画・さいたま市初出品)
????(絵画・坂戸市)
3名の方々を会員としてお迎えすることができました。
8.反省点
●搬入受付
今年は2時からの受付にして、スタッフがその前に搬入、仕事の流れを確認しようという意味合いでしたが、多量の作品数の方や業者さんなどお待たせすることがありました。
受付簿や業者さんは別の受付にするなど、改善をはかりたいと思います。
●駐車場案内
埼玉県立近代美術館は旧埼大跡地利用で、当初から駐車スペースの不足予想はされていました。それゆえ、搬入出の車の誘導は他の利用者団体でも悩ましい問題になっています。幸いにも美術館側が丁寧に対応してくれて、搬入出当日はスタッフの車を公園側通路に置く事を認めてくれているので、なんとか一般の搬入者のスペースを確保できています。埼玉平美でもスタッフの高齢化と、このところの猛暑で、駐車場係にあたれる人材が不足しています。もっと出品者に協力を呼びかけるか、いっそアルバイトを頼むかということが話題になっています。
9.皆さんに支えられて
出品者数や鑑賞者数はコロナ以前のようにはなっていませんが、感染状況を踏まえれば、無事終えることができ、成功裡(せいこうり)に終えたと言っても過言ではないでしょう。出品者や鑑賞者、準備を進めてきた実行委員の皆さんの思いが実を結んだ結果だと思います。
最終日の片付けに最後まで手伝って下さった出品者の本多さん親子、高所作業を厭(いと)わずやってくれた中野さんなど枚挙にいとまがありませんが紙面の都合でできません。この紙面をお借りして感謝いたします。
深刻な感染状況が続いていた今夏でしたが、多くの出品者や入場者がありましたことは本当にありがたいことです。
コロナの問題はすぐには解決しないと思われます。準備の進め方も含めて、若い人たちの参加しやすい形を検討する必要があります。表現する内容を含めSNSなどを通じた発表方法など〝美術館〟という枠にこだわらない若い人のやりかたや、埼玉平美展と美大生のコラボなども今後は検討する必要があるでしょう。
平和が何より大切であるということが出品者や鑑賞者の皆さんと実感できた56回展でした。
皆さんありがとうございました。
来年又お会いできることを楽しみにしております。お元気で。